第4話 田中の謎作業
田中が深夜に何をやっているのか、気になってきた。
ドアが少し開いていたので覗いてみると、田中はリビングのテーブルに紙を広げて、何かを書いていた。
「何してんの」
田中は振り返らずに言った。「規約の改訂版を作っている」
「夜中の2時に?」
「インスピレーションは時を選ばない」
近づいて見ると、A4の紙に細かい字で「共同生活規約 改訂第二版」と書いてあった。条文は第17条から増えて、すでに第24条まであった。
「どんな条文が増えたの」
「第18条、冷蔵庫の上段は共有とする。第19条、洗濯物は乾いたら速やかに取り込む。第20条——」
「待って、それ普通の生活ルールじゃないの」
「規約に昇華することで、遵守率が上がる」
「誰が調べたの、そのデータ」
田中は「体感」と言った。
体感で規約を作るな、と思ったが、なんか言い返せなかった。
──(第5話へつづく)