第4話 壁越しのやり取り
パターンに気づいた。
向こうが叩いた数の、2倍が返ってくる。それが法則のようだった。
3回→6回。1回→2回。2回→4回。
試してみた。5回叩くと、10回返ってきた。
偶然ではない。何かが、応答している。
ある夜、規則を変えてみた。強く1回、弱く2回、という叩き方をした。返ってきたのは、強く2回、弱く4回だった。
リズムまで再現している。
恐怖と好奇心が拮抗していた。怖い。でも目が離せない。
ある夜、壁に耳を当てた。音の後に、何か別のものが聞こえた気がした。
声、ではない。でも声に近い何か。かすかな息遣いのような、あるいは部屋が軋む音のような。
「誰かいるの?」と声に出してみた。
返答はなかった。
ただ、壁の温度が、自分の掌の温度と違う気がした。向こう側が、少し冷たかった。
──(第5話へつづく)