第4話 帰り道の話
ファミレスを出ると、外はまだ真っ暗だった。
午前4時すぎ。空気は冷たくて、涼花は少し肩を丸めながら歩いていた。
「駅まで一緒に行くよ」と言うと、「方向違うでしょ」と返された。「知ってる」と答えると、今度は何も言わなかった。
しばらく無言で歩いた。コンビニの明かりが遠くに見えた。
「眠れなくなったのって、いつ頃から?」
僕が聞くと、涼花は少し間を置いた。「去年の春かな。なんかうまく言えないけど、ある日急に、夜が長くなった感じ」
「何かあったの?」
「あった、とも言えるし、なかった、とも言える。大きな出来事じゃないんだよね。ただ、気づいたら眠れなくなってた」
僕には経験がなかった。眠れない夜の感覚が、どんなものかを。
「怖くない?」と聞くと、「最初は怖かった」と彼女は言った。「今は慣れた。慣れたくはなかったけど」
駅に着いた。涼花は改札を通りながら振り返った。「ありがとね、話聞いてくれて」
「また眠れない夜は声かけて」と言うと、彼女は少しだけ笑った。
初めて見た、本物の笑顔だった気がした。
──(第5話へつづく)