同居初日に田中は言った。「ルールを決めよう」
僕は「いいよ」と言った。その一言が、全ての始まりだった。
田中が取り出したのはA4のノート。表紙に「共同生活規約 第一版」と書いてあった。
「第一条」と田中は読み上げた。「冷蔵庫は左右で分割する。左が俺、右がお前」
「まあいいけど」
「第二条。深夜のコンビニ遠征は事前申告制とする」
「なんで?」
「買い物が被ると悲しいから」
第三条以降が問題だった。
「第三条。深夜2時以降にカップ麺を食べる場合、麺をすする音は最大デシベルを規定する」
「規定できる話じゃないだろ」
「第四条。笑い声は23時以降、口に手を当てること」
「何見て笑うんだよ深夜に」
「俺はたまに夜中にお笑い動画見て爆笑するんだよ」
初めて知った情報だった。
全部で十七条あった。
最後に田中は言った。「署名して」
「これ法的効力ある?」
「ない」
「じゃあ意味は?」
「誠意」と田中は言った。真顔で。
僕は署名した。なんか負けた気がした。
翌朝、冷蔵庫の境界線がマスキングテープで引いてあった。
──(第2話へつづく)