第2話 針の導く先
羅針盤は、北でも東でも南でも西でもない方向を指していた。
セラは「行くべき場所を示すから」と言った。それは方角ではなく、場所そのものを指すのだと言った。
半信半疑で、針の向く方に歩き始めた。
街を抜けると、古い水路沿いの道に出た。普段は通らない道だった。雑草と石畳が混じり合い、日当たりが悪いせいか空気が少し湿っていた。
羅針盤の針は揺れながら、ある一点で止まった。
水路の脇に、小さな木の扉があった。壁に埋め込まれたような扉で、表札も看板もない。ただ、扉の縁に古い彫刻があった。地図の模様だった。
押してみると、音もなく開いた。
中は薄暗く、本棚がいくつも並んでいた。地図の本だけが、壁を埋め尽くしていた。
「いらっしゃい」
奥から、しゃがれた声がした。
──(第3話へつづく)