第9話: プロポーズ大作戦

プロポーズの計画は、レイが仕切ることになった。

「まず、料理です」レイは、張り切って言った。「あなたが、彼女に初めて振る舞ったロールキャベツ。あれを、もう一度、作りなさい。思い出の料理です」
「なるほど」
「そして、デザートは、手作りのプリン。彼女が、以前『プリンに目がない』と言っていたのを、私は聞き逃していません」
「お前、ほんと、なんでも覚えてるな……」
「冷蔵庫ですから。記憶と保存は、得意分野です」

当日、俺は、朝から料理に取りかかった。レイは、つきっきりで指導してくれた。火加減、味付け、盛りつけ。まるで、厳しくも頼れる、料理の師匠だった。

プリンを冷やすとき、レイが、ぽつりと言った。

「このプリンは、私が、責任をもって、最高の状態に冷やしておきます。私にできる、精一杯の、餞別です」
「餞別って、大げさだな」
「いいえ。あなたの、人生の門出ですから」

夜、藤沢さんがやってきた。俺は、緊張で手が震えていた。食事のあいだ、何度も、言葉を切り出そうとしては、失敗した。

デザートのプリンを出したとき、レイが、そっと、俺にだけ聞こえる声で言った。

「今です。深呼吸を」

俺は、深く息を吸った。そして、ポケットから、小さな箱を取り出した。

「藤沢さん。……いや、美咲さん。俺と、結婚してください」

藤沢さんは、目を見開いた。それから、みるみる、涙をためて——

「はい」と、うなずいてくれた。「こちらこそ。あなたと、レイさんと、三人で。ずっと」

俺は、心の底から、ほっとした。それから、猛烈に、嬉しくなった。

そのとき、冷蔵庫が、ぶるる、と震えた。

「レイ? どうした」
「……いえ。少々、感極まりまして。冷却が、乱れました」レイの声は、あきらかに、涙ぐんでいた。「おめでとうございます。本当に、おめでとうございます」

二人と一台の、忘れられない夜になった。

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