翌日、私はその写真店をもう一度訪ねた。
「これ、他の方の写真が混ざってるみたいなんです」
三十七枚目を差し出すと、白髪の店主は老眼鏡をかけ直して、じっと見入った。そして、首をかしげた。
「いや……これは、あなたのフィルムから出たものですよ」
「そんなはずないです。私、こんな場所で撮ってません」
「でもね、フィルムってのは連番で焼くんです。ほら、コマの端に番号が振ってあるでしょう。これ、ちゃんとあなたのフィルムの三十七コマ目です」
見ると、確かにフィルムの縁に、他のコマと連続する番号が刻まれていた。他人の写真が紛れ込んだのではない。私のフィルムに、確かに三十七枚目が「写って」いた。
「でも、三十六枚撮りですよね。三十七枚目なんて、あるわけない」
「まあ、たまに三十七枚目まで写ることはありますよ。フィルムの巻き方で、少し余裕が出ることがあってね」
店主は事もなげにそう言った。けれど、その説明では、私が撮った覚えのない女性が写っている理由にはならない。
「この、写ってる場所、心当たりありませんか」と私は聞いた。
「さあ。古い和室ですなあ。昔はどこにでもあったような……」
店を出てから、私はもう一度、その一枚をじっくり見た。
うつむいた女性。顔の上半分は影に沈んで見えない。着物のような、地味な色の服。畳の縁のすり切れ方まで、やけに鮮明に写っている。
そして、窓の外の鉄橋。私が現実に撮った、あの鉄橋。
偶然だ。何かの偶然だ。そう思い込もうとした。
でも、その夜、私はもう一つのことに気づいてしまった。
女性の座る畳の、ちょうど手前。写真の下の端に、ほんのわずかだけ、こちらを向いた足の先が写っていた。
それはまるで、この写真を撮った「誰か」の足のように見えた。