第6話: 所長の正体

神様相談所で働くうち、私はある疑問を抱くようになった。

所長の宇迦さんは、何者なのだろう。神様たちは皆、彼に敬意を払っている。ただの人間ではなさそうだ。

ある夜、私は思いきって訊いてみた。

「宇迦さんって、もしかして、神様なんですか」

宇迦さんは、お茶を飲みながら、さらりと答えた。

「うん。僕、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)。稲荷の総本山みたいなもんだよ」

お茶を吹きそうになった。稲荷の大神。相当、偉い神様じゃないか。

「な、なんで、そんな偉い神様が、こんな相談所を」

「昔はね、神様も人間も、もっと近かったんだ。困ったことがあれば、気軽に神社に相談に来た。でも今は、みんな忙しくて、神様のことなんて忘れちゃった」

宇迦さんは、少し寂しそうに笑った。

「だから、せめて神様同士が助け合える場所を作ろうと思ってね。それが、この相談所。神様だって、悩むし、困る。誰かに頼りたい時がある」

「でも、それなら、なんで人間の私を雇ったんですか」

宇迦さんは、私をまっすぐ見た。

「神様だけだと、視野が狭くなるんだ。人間の発想が、必要なんだよ。君、いつも僕らが思いつかない解決策を出すだろう。貧乏神の再就職、雷神のダーツ、縁結びの発想の転換」

照れくさくなって、私は下を向いた。

「神様は、完璧だと思われてるけど、そうじゃない。だからこそ、人間の柔軟な考えが、僕らを助けてくれる。真希さんは、この相談所に、なくてはならない存在なんだ」

二千円のために始めたバイトだった。でも今は、少し違う気持ちで働いている。困っている神様を助けるのが、なんだか、嬉しいのだ。

「じゃあ、これからも、よろしくお願いします」私は言った。「時給、据え置きでいいので」

「あ、それ、逆に怪しいから、ちゃんと二千円払うよ」

宇迦さんが笑った。整った顔が、少年みたいに、くしゃりとなった。

この相談所、意外と、悪くない職場かもしれない。

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