第5話: 縁結びの神、大失敗

バイトにもすっかり慣れてきた頃、華やかな女神が相談に来た。

桃色の着物に、きらびやかな装飾。縁結びの神様だという。だが、その表情は、どんよりと曇っていた。

「聞いてよ~! 私、大失敗しちゃったの~!」

「失敗、ですか」

「縁結びを間違えちゃって! 結ぶ相手を、取り違えたの! Aさんと結ぶべき赤い糸を、間違えてBさんに結んじゃって!」

縁結びの神様が、糸を間違える。あってはならないミスである。

「そのせいで、今、変な三角関係になっちゃってて~! どうしよう~!」

女神は、頭を抱えた。

宇迦さんが、ため息をついた。

「縁結びさん……あなた、また寝ぼけて仕事したでしょう」

「うっ……だ、だって、最近、恋愛相談が多くて、残業続きで……」

神様も、働き方改革が必要らしい。

「で、間違えた糸は、もう結び直せないんですか」私は訊いた。

「それが、一度結んだ糸は、簡単にはほどけないの~。無理にほどくと、両方傷ついちゃう」

難しい問題だった。私は考えた。取り違えた縁。でも――

「あの、それって、本当に『間違い』なんでしょうか」

女神が、きょとんとした。

「Aさんと結ぶ予定だったのを、Bさんに結んじゃった。でも、もしかしたら、Bさんとのほうが、うまくいくかもしれない。縁って、案外、そういう『偶然』から始まるものじゃないですか?」

女神は、はっとした顔をした。

「そ、そっか……! 間違いだと思ってたけど、これはこれで、新しい縁かも……!」

「様子を見て、本当にうまくいってないなら、その時に考えればいいんじゃないでしょうか」

数日後、女神が再びやってきた。今度は、満面の笑みで。

「真希ちゃん、聞いて! BさんとCさん、両想いになったの! 間違いが、最高の縁になったのよ~!」

「よかったですね」

「あなた、縁結びの才能あるわ! うちで働かない?」

「いえ、遠慮しておきます」

神様のスカウトを断ったのは、後にも先にも、私くらいだろう。

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