第6話: 花言葉の伝言

藤代さんは、少しずつ変わっていった。

最初はただ花を買うだけだったのに、最近は花言葉を自分から尋ねるようになった。おばあさんに、その週のメッセージを届けたいのだと言う。

「今週の祖母、少し元気がなくて。励ましたいんです」

私はガーベラを勧めた。「希望」「前向き」。彼は真剣な顔で頷いて、赤いガーベラを一輪選んだ。

「花言葉って、伝言みたいですね」と彼は言った。「言葉にすると照れくさいことも、花なら渡せる」

その通りだと思った。私自身、いつも花に自分の気持ちを託してきた。

「藤代さんは、おばあさまに何を伝えたいんですか」

「――長生きしてほしい、って」彼は少し声を落とした。「でも本当は、それが難しいことも、わかってるんです」

私は何も言えず、ただ赤いガーベラをそっと包んだ。

「だから、一日でも笑っていてほしくて。花を見て、少しでも」

包み終えて渡すと、彼は花を胸に抱くように受け取った。

「七海さん。もし、僕が花言葉であなたに何かを伝えたら、わかってくれますか」

突然の言葉に、心臓が跳ねた。

「……わかる、と思います。私、花のことなら得意なので」

彼は少し笑って、「じゃあ、いつか」とだけ言った。いつか。その言葉が、雨上がりの空みたいに私の胸に広がった。

彼が帰ったあと、私はふと考えた。もし彼が花言葉で気持ちを伝えてくれるなら、私はどんな花を返すだろう。

店の隅に、まだ蕾のままのバラがあった。開くのを待つように、私の気持ちもまだ、そっと閉じていた。

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