第5話: 店長の帰還

ある夜、めったに深夜に来ない店長が、突然、店に現れた。

「田村くん、防犯カメラの映像、確認したいんだけど」

田村は、内心、ぎくりとした。防犯カメラには、あの強盗未遂の様子が、しっかり映っているはずだった。

「な、何かありました?」

「いや、最近、変な客が多いって、本部から連絡があってね」店長は、モニターを操作した。「あれ? この、包丁持った男……これ、強盗じゃないの?」

映っていたのは、初日の佐々木だった。

「あー、それは、その」田村は、必死で言い訳を探した。「コスプレ、です」

「コスプレ?」

「はい。最近、流行ってるんですよ。強盗ごっこ、っていう。すぐ帰りましたし」

「そんな流行、あるか?」

そのとき、間の悪いことに、自動ドアが開いた。

入ってきたのは、佐々木だった。

「よお、田村くん! 今日、給料出たから、肉まん、おごるぜ!」

店長が、佐々木を見た。そして、モニターの映像と、見比べた。

「……君、この、強盗の」

佐々木が、固まった。田村も、固まった。

店内に、気まずい沈黙が流れた。

「あ、あの、店長」田村が、慌てて言った。「この人は、その、常連さんで」

「田村くん」店長は、真剣な顔で言った。「強盗を、常連にしちゃダメだろう」

「……すみません」

佐々木は、深々と頭を下げた。

「あの、店長さん。俺、あの日、本当に強盗しようとしました。でも、田村くんに止めてもらって、今は、真面目に働いてます。田村くんは、俺の恩人なんです。どうか、彼を怒らないでください」

店長は、しばらく、佐々木の顔を見ていた。それから、大きなため息をついた。

「……まあ、通報しなかったのは、問題だけどな」店長は、頭をかいた。「でも、人を、犯罪者にしないで済んだんだ。それは、悪いことじゃない」

「店長……!」

「ただし、田村くん」店長は、びしっと指を差した。「今後、強盗が来たら、ちゃんと通報しろよ。命に関わったら、大変だぞ」

「はい」田村は、うなずいた。「善処します」

「善処、って言った?」

店長は、なんだか釈然としない顔で、帰っていった。

残された田村と佐々木は、顔を見合わせて、こっそり笑った。

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