反転した部屋で、私は何日を過ごしただろう。
時間の感覚は、とうになかった。空は、いつも同じ薄暗さのままで、明るくも暗くもならない。腹は減らず、眠くもならない。ただ、正面の鏡だけが、本物の世界を映していた。
鏡のなかでは、私の顔をしたものが、私の生活を送っていた。私の部屋で眠り、私の服を着て、私の職場へ出かけていく。器用に、私になりすまして。
誰も、気づかないのだ。動作の遅れも、もうなかった。あれは、完璧に、私になっていた。
私は、鏡を叩いた。叫んだ。気づいて。それは私じゃない。私は、こっちにいる。
でも、声は届かない。私の手は、ガラスの向こう側に、触れることさえできなかった。
メモの言葉が、頭を離れなかった。ここから出るには、次の誰かに、席を譲るしかない。
つまり——私が、新しい住人を、この鏡に引きずり込めば。私は、外に出られる。あの部屋に戻れる。私の人生を、取り戻せる。
前の住人も、そうやって私を選んだ。手招きをして、目を合わせて、遅れさせて、少しずつ、私を影に変えていった。
私は、鏡の前に立った。
本物の世界の、私の部屋。次に、誰かがここに越してくれば。その誰かが、夜、廊下の鏡の前を通れば。私は、あの手招きを、するのだろうか。
おいで。私の代わりに、ここへ。
そんなこと、できるわけがない。私は、こぶしを握った。誰かを、こんな場所に閉じ込めるなんて。
でも——鏡の向こうで、私の顔をしたものが、こちらを見て、笑った。
その笑みが、言っていた。
いずれ、お前もそうなる。ここに長くいれば、飢える。孤独に、飢える。そして、必ず、手招きをするようになる。私が、そうだったように。
私は、鏡から目をそらした。
そらした先の、反転した部屋の隅に。
女が、ひとり、うずくまっていた。私より、ずっと前から、ここにいる誰か。老女でも、前の住人でもない、もっと古い、誰か。
こちらを見て、その女も、笑っていた。