それから一ヶ月、同盟は、本気で戦った。
黒田部長は、部長業で培った経営知識で、緻密な事業計画を作った。佐々木さんは、深夜営業の価値をデータで示す資料をまとめた。スミレさんのSNSは、「眠れぬ夜の駆け込み寺」というテーマで、再びバズった。店長は、深夜限定メニューを次々と開発し、幻のパフェに加え、「吸血鬼のトマトパスタ」も名物になった。夜宮さんは、夜勤明けの同業者たちを、たくさん連れてきた。
僕は、そのすべてを、必死に支えた。
そして、本社との交渉の日。黒田部長が、スーツをびしっと着込んで、乗り込んでいった。
数時間後。店に戻ってきた黒田部長は、無言だった。
「……ど、どうだったんですか」と僕。
黒田部長は、しばらく僕たちを見回して、それから、にやりと笑った。
「この店の、深夜営業――存続、決定だ!」
店中が、爆発した。
「やったー!」とスミレさんが飛び上がり、佐々木さんが涙を流し、店長がへたり込み、夜宮さんがマントを翻して「我が念が勝った!」と叫んだ。
「試験的に、この一店舗だけ、深夜営業を残すことになった」と黒田部長。「地域の需要と、話題性が、認められたのだ。……我々の、勝利だ」
僕は、胸がいっぱいになった。
変な人たちだと思っていた。ドリンクバーで遊ぶ暇な連中だと。でも、この人たちは、一つの店を、一つの居場所を、本気で、守り抜いたのだ。
数ヶ月後。
午前三時のサニーテーブルは、今夜も、灯りがついている。
黒田部長は、相変わらずドリンクバーの配合を研究し、夜宮さんはトマトパスタをすすり、スミレさんは推しの話をし、佐々木さんは(なんと、この店の副店長として再就職した)、レジを打っている。
「三上くん」と黒田部長が、僕を呼んだ。「本日の議題だ」
「今日は、何ですか」
「新メニュー、『同盟パフェ』の、命名会議である!」
「まだ、やるんですか、それ」
「当然だ。同盟の議題に、終わりはない」
僕は、笑った。
眠れない夜は、誰にでもある。孤独な夜も、逃げ出したい夜も。
でも、午前三時に、ここへ来れば、変な仲間たちと、くだらない作戦会議ができる。それだけで、朝が、少し待ち遠しくなる。
深夜ファミレス同盟の灯りは、今夜も、静かに、あたたかく、灯り続けている。