第6話: 消す方法

祖母の日記には、三十七枚目を「光に晒して消す」とあった。

ネットで調べると、フィルムは強い光に当てると感光して、写った像が飛んでしまうという。けれど、私の三十七枚目は、すでにプリントされた紙の写真だ。ネガはあの店に置いてきた。店はもう、ない。

紙の写真を燃やせば、消えるだろうか。

私は二枚の三十七枚目を持って、ベランダに出た。ライターで、一枚目の端に火をつける。

炎が写真をなめて、女性の姿がじりじりと縮れていく。うつむいた顔が、煙の中で揺れる。焼けろ、消えろ。祈るような気持ちで見つめた。

そのとき、燃えかけの写真の中の女性が、ぐるりと顔を上げた。

炎の熱で紙が反っただけだ。そう思いたかった。けれど、影に沈んでいた彼女の顔が、確かにこちらを向いた。落ちくぼんだ両目が、まっすぐ私を捉えていた。口が、何かを言うように、ゆっくりと開いた。

私は写真を取り落とした。写真はベランダの床で燃え尽き、黒い灰になった。

荒い息を整えて、もう一枚を見た。

無事だった――と思ったのも束の間、私は気づいてしまった。残った二本目の三十七枚目の中で、女性が、さっきより大きく写っていた。畳の目にして、二マスぶんも近づいている。もう和室の中央まで来て、顔は完全にこちらを向いていた。

一枚を焼いたぶん、もう一枚の中で、彼女が距離を詰めたようだった。

消そうとしたことが、逆に彼女を近づけたのだ。

そして、燃やした一枚目の灰の中から、焦げずに残った小さな紙片が一枚。拾い上げると、そこには女性の、白い足の先だけが写っていた。まるで、燃える部屋から、こちらへ一歩踏み出したかのように。

私は理解した。この女は、消せない。消そうとするほど、近づいてくる。

では、どうすればいいのか。祖母の日記の続きに、答えはあるだろうか。

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