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第2話 パターン
映り込みは、毎回同じ場所ではなかった。
一回目は部屋の隅。二回目はカメラの右端。三回目は背後の棚の前。動画を撮るたびに、予測できない位置に現れるのだ。サキはそれを確認するたびに、心臓が小さく跳ねた。
でも共通していることがあった。
必ず0.3秒。必ず一度だけ。そして、必ず動画の後半に出てくるのだ。最初の動画で気づいたときは、編集のミスだと思った。二つ目も同じパターンで現れたときは、手ぶれか何かだろうと自分を納得させた。しかし三つ目の動画でも同じリズムで繰り返されたとき、これは偶然ではないのだと確信した。
偶然にしては、整然としすぎている。
サキはパソコンのモニター前に身を乗り出した。動画ソフトで再生速度を落とし、フレームを一枚ずつ確認していった。輪郭は毎回少しずつ違う。角度も、位置も、大きさも異なっている。でも全体の「雰囲気」は同じだった。同じ何かが、毎回繰り返し映り込んでいるという、そういう確信を与えるような。
背が高い。腕が長い。顔は、よく見えない。
その三つの特徴だけが、毎回共通していた。
サキは疲れた目をこすりながら、友人の麻衣にメッセージを送った。動画ファイルを三つ添付して、「何か見える?」と聞いた。数分後、麻衣から返信が来た。
「うーん、影? 光の反射じゃない?」
サキはスマートフォンを握ったまま、天井を見つめた。そう言えばそう見える。光がレンズに入り込んで、たまたまそういう形に映っただけかもしれない。麻衣の指摘は、もっともらしくて、理にかなっていた。
でも私には、そうは見えなかった。
サキは動画をもう一度再生した。その「何か」の輪郭をなぞるように、目で追った。影や光の反射なら、もっとぼんやりしているはずだ。もっとランダムなはずだ。でもこれは、毎回同じ特徴を持っていた。意図的に、そこにいるかのように。
翌日、サキは次の動画を撮影することにした。今度はカメラの角度を変えた。部屋の対面に置いてあった棚を背景にして、カメラを少し上向きにセットした。いつもと違う構図で、同じ動作を繰り返した。
映り込みは、角度に関係なく現れた。
サキは息を止めて、フレームを確認した。今度は左側の上部に映っていた。やはり0.3秒。やはり一度だけ。背が高く、腕が長い。顔は相変わらず、よく見えない。
これは偶然ではない。サキはそう思いながら、デスクの椅子に身を沈めた。部屋の中で、一人きりのはずなのに。何かが、ずっと見守っているような、そんな気がしてならなかった。
──(第3話へつづく)
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