第4話: 雷神、免許を取る

その夜、社務所の外で、ものすごい轟音がした。ドーン、と地面が揺れる。

何事かと外を見ると、境内に、筋骨隆々の大男が仁王立ちしていた。背中に太鼓を背負い、頭に角が二本。

「雷神だ」宇迦さんが、げんなりした顔で言った。「また来た」

雷神は、のっしのっしと社務所に入ってきた。天井に頭がつきそうだ。

「宇迦ァ! 相談だァ!」

声もでかい。私は耳を押さえた。

「はいはい、何ですか。てか、声が大きい」

「実はなァ! 俺、雲を運転するのが下手でなァ! この前、うっかり街の真ん中に雷を落としちまってなァ! 苦情が来たんだよォ!」

雷神の悩みは、まさかの運転技術。雲の操縦が下手で、雷を誤爆するらしい。

「それでなァ! 運転を、基礎から習いたいんだよォ! 自動車教習所みたいなのに、通えないかなァ!」

私は思わず口を挟んだ。

「雲の教習所って……あるんですか?」

「ないから、困ってんだよォ!」

宇迦さんが、腕を組んで考えた。

「うーん。雷神さんの問題は、要するに『距離感』ですよね。狙ったところに正確に落とせない」

「そうそう! それだ!」

「真希さん、何かいい練習法、ない?」

私は少し考えて、ひらめいた。

「あの、ダーツとか、どうですか。的に狙いを定めて当てる練習。感覚が掴めるかも」

雷神が、目を見開いた。

「ダーツ……! やってみる!」

それから雷神は、社務所の壁にダーツの的を貼り付け、深夜の特訓を始めた。ドスッ、ドスッと矢が刺さる。

数週間後、雷神は見事、狙った場所にだけ雷を落とせるようになった。街の苦情も、ぴたりと止んだらしい。

「真希のおかげだァ! 礼にダーツ、教えてやるぞォ!」

「い、いえ、結構です」

こうして私は、雷神とダーツ仲間になった。ちなみに、私のほうが圧倒的に上手い。神様、意外と不器用である。

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