翌日、私は写真店へ向かった。
駅前の、あの古びた店。白髪の店主がフィルムを受け取ってくれた、あの店。行けば、何かがわかるはずだった。
けれど、そこに店はなかった。
シャッターの下りた店舗の前に立って、私は呆然とした。ガラス戸には「閉店しました 長い間ありがとうございました」の貼り紙。日付は、二週間前になっていた。ほこりの積もった郵便受けに、何通ものチラシが差し込まれたままだった。
どう見ても、ここ数週間、誰も出入りしていない。
でも、私はここでフィルムを二度も現像に出した。受け取った写真は、今も手元にある。あれは、幻ではない。現に、三十七枚目の女は、私を追ってきている。
シャッターの隙間から、暗い店内を覗いた。カウンター、現像機、色褪せた見本写真のパネル。すべてが埃をかぶって、静かに眠っていた。
そのとき、店内の壁に貼られた、一枚の古いモノクロ写真が目に入った。
和室に座る女性の写真だった。
息が止まった。あの三十七枚目の、同じ女性だった。同じ着物、同じ畳。ただ、この写真の中の女性は、まっすぐカメラを見ていた。若く、少し寂しげな顔で、こちらを見つめている。
パネルの下には、色褪せた文字で説明書きがあった。かろうじて読めた。
『当店 初代店主 昭和三十×年 撮影』
初代店主。私がフィルムを渡した、あの白髪の老人ではない。もっと昔の。
そして、その女性の写真の隅に、小さく書き添えられた一文があった。
『最後の一枚。撮影後、行方知れず』
最後の一枚。撮影後、行方知れず――。
私は、あの女性が「三十七枚目」に写る意味を、うっすらと理解しはじめていた。
彼女は、写真を撮り終えた誰かを、いつも探しているのだ。