数日後、天界からの正式な通達が届いた。宇迦さんが、封書を開ける。私は、固唾を呑んで見守った。
宇迦さんの顔が、ぱっと明るくなった。
「真希さん! 存続、決定だって!」
「本当ですか!」
「うん。それどころか――」宇迦さんが、通達を読み上げた。「『よろず神様相談所を、神と人の橋渡しをする正式な機関として認可する。人間の職員の雇用を、特例として許可する』だって!」
私は、思わず飛び上がった。相談所は、存続する。私も、辞めなくていい。
「みんなのおかげだね」宇迦さんが、優しく笑った。「君が、神様たちの心を動かしたから。神々が、人間を守るために立ち上がった。そんなの、何百年ぶりだよ」
その夜、相談所で、ささやかな祝賀会が開かれた。雷神が持ってきた酒(なぜか一升瓶)、縁結びの神が作った料理、疫病神が淹れたお茶。みんなで、輪になって笑った。
「真希ちゃん、これからも、よろしくね!」
「困ったら、また相談に来るからなァ!」
「お姉さん、油揚げ、また探してね~!」
神様たちの温かい言葉に、私は、心から笑った。
宇迦さんが、私の隣に来て、そっと言った。
「真希さん。この仕事、続けてくれる?」
「もちろんです」私は即答した。「時給二千円ですし」
「そこは、正直だね」
二人で、笑った。
最初は、お金のために始めたバイトだった。でも今は、違う。困っている神様を助け、神様たちに助けられ、いつのまにか、ここは私の大切な居場所になっていた。
八百万の神様は、完璧じゃない。物を落とすし、道に迷うし、孤独に泣く。人間と、そんなに変わらない。
だからこそ、支え合える。神様も、人間も。
「さて」私はカウンターに座り直した。「今夜も、営業開始です」
午前零時。玄関の戸が、がらりと開く。今夜は、どんな神様が、どんな悩みを抱えてやってくるだろう。
よろず神様相談所は、今夜も、深夜のこの町で、ひっそりと灯りをともし続けている。