夏。宇迦さんが、突然とんでもないことを言い出した。
「よし、神々の運動会をやろう!」
「運動会?」私は聞き返した。
「最近、相談に来る神様が減っててね。みんな元気がない。景気づけに、親睦を深めようと思って。真希さん、企画よろしく!」
丸投げである。だが、断れる雰囲気ではなかった。
こうして、深夜の神社の境内で、前代未聞の「神々の運動会」が開催されることになった。
参加者は、雷神、貧乏神、縁結びの神、疫病神、コン太たち眷属、そして所長の宇迦さん。
最初の競技は、玉入れ。だが、雷神が張り切りすぎて、玉を投げるたびに雷が落ち、カゴを焦がした。失格。
次は、借り物競走。「福を持っている人」というお題で、福の神が引っ張りだこになり、大混乱。
綱引きでは、貧乏神が「どうせ私なんて」とネガティブになり、力が出ない。私が「あなたがいないと負けます!」と励ますと、突然踏ん張り、勝利に貢献した。
一番盛り上がったのは、リレーだった。アンカーの疫病神が、最初はビリだった。だが、みんなが「疫病神、頑張れー!」と応援すると、彼は今まで見せたことのない全力疾走で、大逆転。
ゴールした疫病神は、汗だくで、満面の笑みだった。
「私、応援されたの、生まれて初めてだ……!」
みんなが、疫病神を胴上げした。避けられていた災いの神が、今、神々の輪の中心にいた。
運動会は、大成功だった。神様たちは、久しぶりに、心から笑っていた。
宇迦さんが、私の隣で言った。
「ありがとう、真希さん。君のおかげで、みんな元気になった」
「私は、何も。みんなが、頑張っただけです」
「いや、君がいるから、この相談所は、こんなに温かい場所になった。神様たちの、心の拠り所になったんだ」
星空の下、神様たちの笑い声が響いていた。二千円のバイトが、いつのまにか、私にとっても、かけがえのない場所になっていた。