同盟のみんなと過ごすうち、僕は、ひとつの謎が気になっていた。
吸血鬼の夜宮さん。本当に、五百歳なのか。ただの変な人なのか。
ある夜、僕は、思いきって聞いてみた。
「夜宮さん。正直に教えてください。本当は、何者なんですか」
夜宮さんは、トマトジュースをすすって、少し黙った。
「……三上よ。がっかりするなよ」
「はい」
「我は、ただの、夜勤明けの、警備員だ」
「……はい?」
「昼間は眠り、夜に働く。もう二十年、この生活だ。日の光を、ほとんど浴びぬ暮らしよ。ゆえに、いつしか、自分を吸血鬼だと思い込むことにした。そのほうが、この孤独な夜勤生活に、ロマンがあるだろう」
僕は、拍子抜けした。そして、ちょっと、切なくなった。
「奥さんとか、いないんですか」
「早くに、別れた。夜働く男に、家庭は難しくてな。今は、一人だ。昼に眠り、夜に起き、明け方、このファミレスで、トマトジュースを飲む。それが、我の五百年……いや、二十年だ」
夜宮さんは、寂しそうに笑った。
「でもな、三上。この同盟に出会ってから、我の夜は、変わった。以前は、ただ孤独に、朝を待つだけだった。今は、黒田殿と、くだらん議論をし、スミレ殿に叱られ、店長のパフェを食う。……我の、長い夜に、仲間ができた」
「夜宮さん……」
「だから、我は、これからも吸血鬼でいる。そのほうが、楽しいからな。ロマンだよ、ロマン」
僕は、うなずいた。
吸血鬼でも、警備員でも、どっちでもいい。夜宮さんは、夜宮さんだ。この深夜のファミレスに集う、大切な同盟の一員だ。
「夜宮さん」と僕は言った。「今度、トマトジュースじゃなくて、本物の血みたいに真っ赤な、特製のトマトパスタ、店長に作ってもらいましょうか」
夜宮さんの目が、きらりと光った。
「おお、それは、良い。吸血鬼の、正餐だな」
「はい。深夜限定、吸血鬼のパスタです」
変な同盟の、変なメニューが、また一つ、増えそうだった。