スミレさんのSNS作戦は、思いのほか、大成功した。
「深夜限定・幻のパフェ」の投稿が、じわじわ拡散され、ある夜、ついにバズった。
結果――午前三時のファミレスに、行列ができた。
「た、大変です!」と僕は厨房に叫んだ。「お客さん、二十人待ちです!」
「に、二十人!?」と店長が青ざめた。「そんなに作れない! 一つ、二十分かかるんだ!」
深夜のサニーテーブルは、パニックに陥った。
そこで、立ち上がったのが、同盟だった。
「落ち着け!」と黒田部長が、部長の顔になった。「これは、緊急オペレーションだ! 役割分担する! 三上くんは、注文取り! 佐々木くんは、レジと会計! スミレ殿は、待ち客の案内と、ご機嫌取り!」
「ご機嫌取り?」
「あたしゃ、こういうの得意だよ。おまかせな」
スミレさんは、待っている客たちに、リュウくんの話を延々として、なぜか場を盛り上げた。
吸血鬼の夜宮さんは、マント姿のまま、お冷やを配って回った。深夜に現れる本格的な吸血鬼の店員は、逆に「映える」と客に大ウケし、みんな写真を撮った。
「我は、店員ではない」と夜宮さんは不服そうだったが、「ちょっと、こっち向いて!」と言われると、律儀にポーズを取っていた。
黒田部長は、なぜか厨房に入り込み、店長の隣で、生クリームを絞っていた。
「部長業で鍛えた、この安定した手つきを見よ!」
「意外と、上手ですね……」と店長。
僕は、汗だくで注文を取りながら、なんだか笑ってしまった。
昨日まで、ただドリンクバーで遊んでいた変な連中が、今、本気で、一人の男の夢を、支えている。
明け方、最後の客が、幻のパフェを食べ終えて、満足そうに帰っていった。
店長は、厨房でへたり込んで、けれど、晴れやかな顔をしていた。
「……売り切れました。全部。生まれて初めて、僕の作ったものが、こんなに」
黒田部長が、生クリームまみれの手で、店長の肩を叩いた。
「な。捨てたもんじゃないだろう、きみの夢は」
朝日が、窓から差し込んできた。同盟のみんなは、疲れきって、けれど、みんな笑っていた。
午前三時に始まった戦いは、夜明けとともに、勝利で終わった。