その知らせは、突然だった。
ある夜、店長が、暗い顔で、同盟のテーブルに集まった僕たちに告げた。
「実は……この店、来月で、閉店することになりました」
同盟が、凍りついた。
「本社の方針で、深夜営業を、全店やめるそうです。うちの店も、採算が合わないと。……深夜シフトは、なくなります」
黒田部長が、コーラのグラスを、そっと置いた。
「そうか……」
「あんなに、幻のパフェが売れたのに」とスミレさん。
「バズは、一時的なものでしたから」と佐々木さん。「継続的な集客には、繋がらなくて」
しんとした空気が、流れた。
午前三時の、この場所が、なくなる。ドリンクバーの錬金術も、吸血鬼のトマトジュースも、推しの話も、作戦会議も。この、くだらなくて、あたたかい夜が、終わる。
「……我の、居場所が」と夜宮さんが、ぽつりと言った。「また、なくなるのか」
その言葉が、みんなの胸に、重く響いた。
黒田部長が、ゆっくりと、立ち上がった。
「よし」
「黒田さん?」
「本日の議題は――この店を、守る、である!」
「え?」と僕。
「深夜営業がなくなるなら、我々が、この店を続ける方法を考えればいい! 私は伊達に部長を二十年やっておらん! 経営の知恵なら、いくらでもある!」
佐々木さんが、目を輝かせた。「私、事業計画、作れます! マーケティングの経験、活かせます!」
店長が、戸惑った。「で、でも、本社の方針で……」
「本社と、交渉するのだ!」と黒田部長。「深夜のこの店が、地域にどれだけ必要か、数字で証明する! 眠れぬ者たちの、駆け込み寺として!」
スミレさんが、拳を握った。「あたしのSNS、フォロワー増えたんだよ。もう一回、バズらせてやる!」
夜宮さんも、立ち上がった。「我も、念を……いや、警備の知り合いに、夜勤明けの客を、宣伝しよう」
みんなの目が、また、あの本気の、くだらない、あたたかい光を取り戻していた。
「三上くん」と黒田部長が、僕を見た。「きみも、参加するな?」
僕は、うなずいた。
「もちろんです。この店、僕の職場ですから。それに……大事な、同盟の場所ですから」
最後の作戦会議が、始まった。